感覚にやさしい一足を求めて――素材を探しに海外へ

私たちのブランド「つつした」は、創業92年の靴下工場から生まれました。
長い年月の中で、世の中の靴下は「安く・早く・大量に」つくられるようになりましたが、
その流れの中で、「履けない人」がいることを知りました。

肌が敏感でチクチクする人。
締めつけが痛くて靴下を諦めていた人。
病気や加齢でむくみ、足を守りたくても履けなかった人。

――そんな方々の「履きたいのに履けない」という声に、心が動きました。
それが「つつした」更なる開発に力が入った瞬間です。

つつしたは、かかとがない“まっすぐ構造”で、サイズを選ばず、
誰の足にも自然に寄り添う形。
縫い目のない無縫製製法で、肌あたりがとてもやさしいのが特徴です。

しかし、私の中にはずっと課題がありました。
それは、「もっと感覚に敏感な人にも心地よい素材を見つけたい」という想いです。

どれだけ形がやさしくても、糸そのものが肌に合わなければ、
本当の意味で“やさしい靴下”とは言えません。

そこで私は今年、海外へ素材探しの旅に出ました。
紡績工場や糸メーカーを訪ね、
実際に糸を触り、肌に当て、現地の技術者と語り合いました。

そこには、繊維に情熱を注ぐ人たちがいました。
彼らもまた、「肌にやさしいとは何か」を追求しており、
糸づくりの考え方がとても哲学的で、深いものでした。

ある国で出会った素材は、まるで“呼吸する糸”のようでした。
肌にふれる瞬間、ほっとするようなぬくもりを感じる。
「これなら、感覚過敏の方にも履いていただけるかもしれない」
そう思ったとき、胸が熱くなりました。

日本の技術と、この素材を組み合わせたら――
きっと新しい「つつした」が生まれる。
その確信を胸に、現在、試作を進めています。

つつしたは、単なる靴下ではありません。
「誰もが自分らしく足元から暮らせる」ための、一つのきっかけです。
そして、ものづくりの現場に光を取り戻すための挑戦でもあります。

これからも、使い捨てではなく「長く愛せるもの」をつくり続け、
人にも、地球にもやさしい靴下づくりを目指してまいります。

応援してくださる皆さまに、心から感謝いたします。
新しい素材の「つつした」を、どうぞ楽しみにお待ちください。

樋口メリヤス工業株式会社
代表取締役 中江 優子


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